2009年3月22日日曜日

笑説:さらば我がヅラ -永遠(とわ)の別れ-

本文を読み終えた後にどうぞ→参考 [その1] [その2]

以下の話は実話です。私とマイミクな方は昔の日記で読んだ事があるかも知れません。

その日、Nは徹夜明けだった。恵◎寿ガー◎ンプレ◎スにあるオフィスを出て、都心を抜ける地下鉄日◎谷線に乗り込んだのは昼過ぎの事だった。空席が目立ち、空いている車内。Nは深い眠りに入ってしまった。

「次は北◎住〜北◎住〜」
Nは車内放送で目覚めた。正面に目を遣ると、男がウツラウツラと船を漕いでいる。ああ〜、彼も眠いのだな。夜勤明けだろうか?などと思っていると...ふと男の頭頂部に違和感を感じた。「もしや...」目を凝らして男の頭頂部を観察すると...そこには男の頭の動きに合わせてカパカパと浮き上がっているヅラの姿があった。丁度、海原はるかの様な感じだと言えば解ってもらえるだろうか?どうやら、ネット状のヅラをピンで留めているらしいのだが、片側だけしか固定されていない(ピンが外れている)らしい。周囲を見渡したが、男の「禁断の秘密」に気付いていているらしき者は他に見当たらなかった。

「ククククク...」
Nはこみ上げてくる笑いを抑えるのに必死だった。男の頭はなおも勢いを増してグリングリンと回り続けている。

「北◎住〜北◎住〜」
列車は北◎住駅へと到着した。発車のベルが鳴り、扉が閉まろうかとした瞬間...男はガバっと起き上がり、慌てて降りていった。

プシュ〜
扉が閉まり、列車はゆっくりと動き出す。Nが男の座っていた席に目を遣ると...ん?
黒いフサフサモッソリとした謎の物体
が床に落ちている。慌てて、駅のプラットホームにいる男の姿を探した。男は自然なままの、本来あるべき姿の頭頂部を白日のもとに曝しつつ、悔しそうな表情で列車を見つめている。どうやら、自身に起こった緊急事態に気付いたらしい。

「ブハハハ!!」
事の顛末を知っているNは、心の奥底からこみ上げてくる笑いを抑えるすべを知らず、思い切り笑ってしまった。

そのままNはしばらく列車に乗っていた。途中、母子連れが男の座っていた座席に座ろうかと試みたものの、母親が床に鎮座する異物に気付くなり、「あれ、何?」と訊く子供を「見ちゃいけません!」と叱りつけながら、別の席へと行ってしまった。

列車が終着駅へ着く前に降りてしまったので、あのヅラがどうなったかはNも知らない。
しかし、ネット状のヅラを見る度に、Nはあの男の姿を思い出さずにはいられないのである。

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